料理のニュース-ジビエ料理

<ジビエ料理>シカやイノシシ肉に人気 衛生管理の指針作り

毎日新聞 8月20日(水)7時30分配信

 シカやイノシシなど野生鳥獣の肉を食材にする「ジビエ料理」の食中毒を防ぐため、厚生労働省が衛生管理の指針づくりを進めている。ジビエ料理を巡っては、地域振興に役立てる取り組みが各地に広がり、メニューに取り入れる飲食店も増加。食の安全を確保する国の基準が必要だと判断した。狩猟シーズンが本格化する11月ごろまでに指針をまとめる方針だ。

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 指針の作成を進めているのは7月に厚労省に設置された専門家の検討会。鳥獣を解体する器具の扱い方や、内臓の処理の方法、寄生虫やウイルスを殺す加熱の基準などを示す方針だ。

 「ジビエ」は狩猟で捕獲した野生鳥獣の肉を意味するフランス語。国内では野生鳥獣による農作物被害の広がりを背景に注目されるようになった。全国の農作物被害は年間200億円以上。環境省の推計によると、2011年度のニホンジカ(北海道を除く)の個体数は約261万頭で20年前の約7倍。イノシシは約88万頭で約3倍に達する。同省は今年5月、野生鳥獣の捕獲事業を強化するため鳥獣保護法を改正し、10年以内にシカやイノシシの個体数を半減させる目標を掲げている。

 こうした対策によってジビエ料理の材料が入手しやすくなり、地域振興に活用する取り組みが始まった。長野県は今年4月、「野生鳥獣対策室」を「鳥獣対策・ジビエ振興室」に改編。地元の観光団体が参加する研究会を設置し、ブランド作りを目指している。三重県も5月から「みえジビエ登録制度」を開始し、参加する飲食店や販売店をホームページなどで紹介。千葉県内には12年3月以降、野生鳥獣の食肉処理施設が2カ所新設された。

 普及に伴い課題となるのが衛生管理だ。牛や豚などの家畜は「と畜場法」などにより衛生管理の規制があるが、野生鳥獣には国の規制がない。シカやイノシシの体内からは寄生虫のほかE型肝炎ウイルスも検出されることがあり、食肉として扱うには注意が必要だ。現在、34の自治体が衛生管理の指針を設けているが、独自に策定しているため、基準にばらつきがあるのが現状だ。このため、「国として統一の指針が必要」との声が強まっていた。

 東京都内で「焼ジビエ罠(わな)」など5店舗のジビエ料理店を経営する「夢屋」(東京都渋谷区)の担当者は「地域振興に役立てればと積極的に取り扱っている。お客さんに安全な料理を提供するためにも、国にはしっかりした指針を作ってほしい」と話している。【桐野耕一】

 ◇ジビエ料理

 ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化。フランス料理では野ウサギやキジ、ヤマバトも食材に使われる。欧州連合(EU)はジビエの衛生管理を厳しく規制し、内臓を除去して食肉加工施設に運ばれた販売用のシカ肉などに、公的な検査を義務付けている。厚生労働省によると、野生鳥獣を扱う国内の食肉処理場は全国に451施設。シカやイノシシの肉の流通量や、扱っている飲食店の数などは把握していないという。

最終更新:8月20日(水)7時30分

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